銭湯や宿泊施設の浴場では刺青(タトゥー)の入った人の入場を遠慮しているところが多いですが、ゴルフ場の場合はどうなのでしょうか。

線引きが難しいため風呂の利用を禁止するコースが大半

 最近では、コロナによる渡航の規制が緩和されたこともあって、街中で外国人観光客を見かける機会も増えてきました。

右腕に五輪のマーク、左腕には祖父の名前「田中豊」を入れているリッキー・ファウラー 写真:Getty Images
右腕に五輪のマーク、左腕には祖父の名前「田中豊」を入れているリッキー・ファウラー 写真:Getty Images

 外国人の中には、おしゃれを目的としたカラフルな刺青(タトゥー)を入れている人もいますが、日本人にとってはかつて罪人や暴力団員が入れるなどしてきた歴史的経緯もあり、あまり良くないイメージを持っている人が多いかもしれません。

 周りの人が不安感を覚える可能性があるので、銭湯や宿泊施設の大浴場では刺青(タトゥー)の入った人の立ち入りを禁止しているところもありますが、ゴルフ場においてはどうなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「日本のゴルフ場では、ほぼ100%の確率でチェックイン時に暴力団などの反社会的勢力の関係者でない旨を証明する欄に、レ点やサインを記入することが各地域の暴力団排除条例に従って義務付けられています。万が一、虚偽の申告をして暴力団員がプレーした場合は、そのゴルフ場の利用約款にのっとり、途中であったとしても強制的に退場させることができます」

「日本においては、刺青(タトゥー)を入れている人は反社会的勢力の象徴のように捉えられて敬遠されがちですが、欧米諸国では『おしゃれの一部』としてごく一般的なものとなっています。また、オリンピックアスリートや欧米のプロスポーツのトップ選手のなかには自己表現の一環として刺青(タトゥー)を入れる人をよく見かけます」

 ゴルフも例外ではなく、有名なところではリッキー・ファウラーが日系の祖父、田中豊さんの名前やリオオリンピック出場を記念した五輪のマークを入れていることが知られています。また、ポリネシアなどタトゥーが伝統文化の一部となっている国々も少なくありません。

「暴力団や、いわゆる『半グレ』の人に彫られているものと、そうでない人に彫られているものはデザインなどを見れば違いが分かることも時々ありますが、実際には線引きはかなり難しいので、ゴルフ場側も非常に判断するのが悩ましいところではあります。そのため、面倒な判別作業を省略するという意味合いも込めて、何らかの彫り物をしている人は少なくともお風呂に入らないようにお願いしています。ただし、その人が反社会的勢力に属しておらず健全な職業に就いていることが証明でき、さらにワンポイント程度の小さな刺青(タトゥー)でウエアを着てしまえば分からないようなものであれば、プレー自体は黙認しているのが現状と言えるでしょう」

「刺青」(和彫り)と「タトゥー」の違いがどのようなものか知らない人も少なくないですが、厳密な違いはなく、どちらも肌に針や刃物で傷をつけて墨などを入れて描かれます。しかし、刺青のほうがより深く傷を入れる傾向が強いようです。

入場そのものを禁止しているコースも

 では、実際にゴルフ場では彫り物を入れている人が入場しようとした際は、どのような対応がなされているのでしょうか。全国でゴルフ場運営を行う株式会社東急リゾーツ&ステイの広報担当者は以下のように話します。

「弊社のゴルフ場も例に倣い、各地域の暴力団排除条例にのっとってチェックイン時に反社会的勢力でない旨を証明するサインをしていただいています。また、彫り物の範囲が広くて明らかに大部分が露出している場合は、入場をお断りするのが一般的なパターンです」

「ところが、外国人のお客様などが入れている刺青(タトゥー)の中には、よく見ないと気が付かないようなものやウエアを着れば分からないもの、さらに配慮がより徹底されている方は目隠しのシールを持参されている方もいらっしゃいます。そのような際は、サインをしていただいたうえで入場自体はお断りしないものの、お風呂に入ることに関してはご遠慮していただく形をとっています」

 彫り物の入った人の利用の可否をどうしているかはゴルフ場によってもまちまちであり、入場そのものを禁止しているところや、浴場を利用せずにプレーだけなら認めているところも存在します。

 また「関東七倶楽部」の一つで名門コースとして知られる埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部は、2021年に東京オリンピックのゴルフ会場に選ばれたことがきっかけで約款が見直され、おしゃれ目的であれば特に制限をかけないとしています。

 日本では、未だに刺青(タトゥー)を入れている外国人に「怖い」というイメージを持ち、近寄りがたい感情を抱いている人が多いと思います。しかし、グローバルかつ多様性の社会になってきているため、ゴルフに限らずあらゆるシーンで刺青(タトゥー)に対する意識は変えていく必要があるかもしれません。

ピーコックブルー